月亮山から降りてもと来た道を引き返そうとすると、一つの看板が目に付いた。
この道を5kmほど進むと古い集落がある。というものだ。
まだ1時半。時間は十分にある。寄り道してみよう。
なんならその後、北東を目指せばいい。
そしたら、遇龍河いかだ下りの乗り口に到着するだろう。
そんな安易な考えで出発。
これが悲劇の始まり。
途中お墓のようなものがあった。
しばらくいくと、集落に到着した。門のようなものが作られ、関所みたいになっている。
しっかりとお金を取られた。20RMB(約300円)。
中はただの集落である。
ここでもビジネスをしようというしたたかな中国人魂を見せ付けられる。
先には欧米人のふたり組観光客がいた。
彼らも文句を言いながらお金を支払っていた。
中には、確かに古い集落が残っている。
見学していると、おじさんに猛烈に怒られた。
住居自体は説明版がついていたり、装飾がついていたり、あたかも見学してくださいという雰囲気をかもし出しているのに、中に入ってはだめということか。非常にわかりにくい。
自分たちで、観光地化しているくせに、そこに住んでいる住民は一枚岩ではないらしい。
なんだかなあ。
ふたりの欧米人も目的地は遇龍河のぼりらしい。
集落の先には道が続いていないらしく、もと来た長い道のりを引き返していった。
月亮山にもどるだけでも30分かかる。
ここまで来て引き返したくなかったので、僕は集落の奥に進んでいく。
一本の細い道があったのでそこを突き進んでいった。
方角的には間違っていないはずだ。
しばらくいくと、広大な畑にでた。
回りはひたすら畑。車もないし、道も見えない。
それでも、この先はつながっているはずだと先へすすんでいく。
天気はいいし、景色もいい。
気持ちいサイクリングだ。
途中、集落に辿りつく。
家が集まっているだけの小さな集落で、お店がありそうな気配もないので素通りする。
この時点で後には戻れなくなっていた。
もう数時間自転車を走らせている。
時刻は3時過ぎ。引き返していたら絶対に帰りつかない。
少し不安になりながら、先に進んでいく。
ただ、自分がどこに進んでいるのかはよくわからない。
地図では、そんなに広くは見えなかった。
だけど、奇峰が林立していて、しかもどれも形が似ているので、自分がどこにいるのかわからなくなる。
川。
ようやく車が走っている道にでる。
とにかく北にいくしかない。
だけど、行けども行けども道。
同じような田園風景と奇峰群。
自分がどこにいるのか、どこまで進んできたのかわからない。
もう時刻は4時を過ぎている。
22:20の電車に乗るためにはせめて8時には陽朔を出ている必要がある。
遇龍河、、いかだ下り、、。
大貴村。どこだここ。
ちゃんとした地図を買ってくるんだった。
地球の歩き方には細かいことは全く書いてない。
地球の歩き方は、典型的な旅行者が典型的な旅行をするための本だ。
少し道を外れると全く役に立たなくなる。
先入観で道は平坦だと思っていた。
北に向かうと、どんどん山道になっていく。
ギアを一番軽くしても自転車を漕いでいられない。
完全にバテた。
そういえば朝食を食べてから、今日は何も口にしていない。
昔はこのくらい全然余裕だっんだけどな。
アラサー、体力の衰えを感じる。
やばい、このまま、ここでギブアップしたらどうなる?
まず、明日までに香港に帰れなくなる。
それどころか、陽朔まで戻れるかもわからない。
動く体力も食い物も無いし、、。
遭難?笑
時間に余裕があれば、焦りもしないだろう。
一日くらい野宿したってどうってことはない。
だけど、僕は帰らなければならなかった。
その目的と現在の状況が余りにもかけ離れているので、さすがに不安になってきた。
体一つならヒッチハイクができるかもしれない。
この自転車は捨てていこうか。失うものは保証金の100RMB(約1600円)だけだ。
でも自転車屋さんに申し訳ないな。
僕は、本気で自転車を放置していくことを検討し始めていた。
山道の途中。どこかわからない場所で撮った景色。
ふと冷静になってみると、綺麗だった。
これを見るためにここまで来たのかもしれないな。
とりあえず遇龍河は諦めよう。べつにどうってことはない。
そう気持ちを切り替えると少し楽になった。
てか、この状況でまだ遇龍河の筏下りするつもりだったのか。
へとへとになりながらも、さらに山を登っていくと、金宝という小さな町についた。
売店もいくつかある。
とりあえずコーラを買って飲んだら少し元気がでた。
おばさんに、陽朔に行きたいんだけど、というとバスがあるという。
親切にバス停まで案内してくれた。
というか、おばさんはバスの客引きだったらしい。
それでも今の僕には大変ありがたい。
バスには小さなトランクがあって、そこに自転車を入れてくれるという。
はい、ここでギブアップします。全力で!!ww
その後は、野菜やら荷物やらが一緒に載せられるよくある田舎の乗り合いバスに揺られて、
陽朔への帰路につくことができた。
途中、筏下りの出発点、遇龍橋を渡る。ずっと遠くに来ていたんだ。
そこで降りる気は全く失せていた。
一時間以上かかって陽朔へ到着。
陽朔に無事かえってきて振り返ってみると、なんと小さな冒険だったんだろう。
だけど、ひさしぶりに限界まで自転車を漕いで、体力を使い切った。
下手したら本当に野宿になるところだった。
目的は全然達成できなかったけど、まあ、こんなんもいいんじゃないか。
無計画な冒険をするのは、時間に余裕があるときに限る。
そんな教訓を得ました。
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