朝5時半に目覚めて、すぐ下のバスターミナルに行く。
おそらく、朝早くこの宿を発つ宿泊客は多い。
そのためだろう。おばちゃんはロビーのソファーで寝ていた。
起こさず行くつもりだったのに、結局起こしてしまった。申し訳ない。
朝6時ちょっと前、お姉さんが来て、切符売り場の中に入っていく。
5分後、制服に着替えて出てくる。
6時ほぼほぼ丁度にバスターミナルは営業を開始した。
時間どおりであることに若干感動しつつ列に並ぶ。
そしてチケットをゲット。龍岩まで230元。だいたい4000円。決して安くはない。
中国の物価も高くなったとつくづく思う。もう日本とあまり変わらないんじゃないか。
でも、深セン駅の350元の3分の2の値段で済んだし、龍岩まで行ける。
バス停にはすでに結構な人がいた。
中国のバスは恥ずかしげもなく行先を書いているから、間違うことがない。
これに乗れれば必ずや龍岩につくはず。
決して座席は広くはない。正直8時間ここに座っていくのはキツい。でも、それ以上にスムーズに龍岩に出発できることがうれしい。
乗客は10人にも満たなかった。
よっしゃ!自由に席を使いまくれる!景色も見たいだけ見れる!
出発早々、さっそく反対側に席を移動する。
兄ちゃん「おい、お前の席はここだろ。戻れ!」
速攻で怒られる。
1番から順々に切符は売られているらしく、10人が前のほうに詰めて座らされている。
いやいや、ふつう日本だったら、一列一人で座らしてくれるでしょ。
納得がいかないので座り続けて景色を撮っていたら、何度も何度も戻れと言ってくる。
しぶしぶ席に戻るが、納得がいかない。
しかし、すぐにその理由がわかった。
ほどなくしてバスが停車したかと思うと、道の途中で大勢の乗客が乗り込んできた。
バスは行きすがら、乗りたがっている人を次々と乗せていき、あっという間に社内は満員になった。
僕は見ていた。そいつらから回収している金は明らかに僕の乗車券より安かった。
途中で乗ってきたおばちゃんが僕の後ろの席に座ろうとする。
おばちゃん「あんた、狭いじゃないの!座席をもとに戻しなさいよ!聞いてんの!ねえ!」
僕はムカついてたので、座席をもとに戻さない。
正規で金払って乗ってんだ。好き勝手にやらせてもらおう。
おばちゃん、結局あきらめて他の席に移る。
バスが止まる。またおばあさんが僕の後ろに座ろうとする。
僕、たたき起こされ、顔面が唾まみれになるくらい、捲し立てられる。
無視。おばあさん、あきらめて他の席に移る。
バスが止まる。またおばさんが僕の後ろに座ろうとする。
僕、たたき起こされ、、、さすがにあきらめた。
これじゃいつまでたっても寝れない、、。
僕には途中でこのバスを止めて乗るというノウハウ、情報がない。
その分、正規の値段で乗せられるのはある意味仕方ないと思う。
中国のバスにどでかい文字で行先が書いてある意味も分かった気がする。
こうすれば、客のほうから手を挙げてくれるから楽なのだ。
しかし、公式なバス会社はこういった実態をどう考えているのだろう。
これは間違いなくルール違反のはず。
おそらく公然と破られているルール違反。
このおかげで、助かっている貧しい人々もいるのだろう。
だけど、一方で不正な利益を得ている男たちもいるだろう。
何が正しいのかよくわからない。
少なくとも、空いている席に人が埋まる。
それは効率が良くて、人のためにもなって、悪いことはないように思える。
龍岩への直行バスは、途中から乗ってきた人たちの要望を聞いて、
高速を降りたり乗ったり、いろんな寄り道をしながら進んでいった。
乗客10人のはずなのに満席の車内。
途中、遠くに発電所の冷却塔が何基も何基も並んでいる光景が目に入る。
それは大きくて、壮大で、かっこよかった。
たぶん、これから見るであろう土楼なんかよりずっとすごい景色。
そうなのだ、いくら土楼がすごいとか、ピラミッドが大きいとか、コロッセウムの技術がヤバいとか、
姫路城が壮大だとか、エッフェル塔が高いとか言っても所詮は昔のレベル。
現代の技術で作られたものにくらべたら正直全然しょぼいんだよね。
それは歴史を勉強して感慨にふけることができたとしても、決して心に訴えかけてくるほどのインパクトはない。
それをみんな気づかないふりして、いや若干心の中では、大したことなくね?みたいな感情がよぎっているんだけど、
まるで田舎から出てきた少年少女のようなふりして、
すごーいとか、きれーいとか、やばーいとか感動しているようなしていないような、
でもせっかく来たから的なリアクションをとるわけだ。
土楼に比べたら、全然、香港の都会のほうがすごいに決まっている。
僕はそんな微妙な感情を抱くため、土楼を目指して進んでいる。
結局、寄り道し続けた直行バスは、9時間半かけて龍岩に到着した。