香港に戻ってきてから2年が経った。
僕の両親は香港が中国に返還される前に、祖父母を香港へ残してカナダへ移住した。
僕の国籍はカナダ人。
物心がつくかつかないかの頃からカナダで育てられた。
だから見た目はアジア人だけど、母国語は英語。
もちろん広東語も喋れるし、字も読めるけど、英語のほうが自然だ。
両親がカナダに移住した頃は、香港が中国に返還されたら、
将来何もかも中国に支配されて、全てを失うんじゃないかとみんな心配した。
だから、みんなこぞって海外に出たらしい。
それは、海外に活路を見出したというより、もっと後ろ向きで、
たとえ香港が失われてしまっても、どこかで生きていけるよう逃げ道を得たかったからだ。
特にカナダは制度上、香港人には移住しやすい土地だったから、
たくさんの人がカナダに渡った。
カナダは環境も良い国だし、きっとチャンスもたくさんある。
そうみんな夢見ていた。
でも、現実は違った。
移住してきたアジア人には優しくなかった。
香港での職とは比べるべくもない仕事しかアジア人には与えられなかった。
自由の国、アメリカに近いし、きっとカナダもリベラルな土地に違いない。
そう両親は信じていたはずだ。
しかし、自由な国に差別が無いなんて信じる人は、ただの無知かお人良しだ。
カナダの大学在籍中に日本に1年間留学した。
正直、日本人の友達はあまりできず、1年じゃ日本語も大して旨くならなかったけど、
アジアが思いのほか素敵なところだということを知った。
何より、肌の色が同じだ。
ここなら、差別されることは無い。
何より、今や香港は中国人需要で一層、発展していた。
今じゃカナダよりもたくさん仕事があるし、金も稼げる。チャンスがある。
大学を卒業して、僕は香港に戻ることに決めた。
IT関係の会社に就職して二年。
今は、日本留学時代に出会った香港人の女性と付き合っている。
それでも、この街で生きていくのは大変だ。
とてもお金が掛かる。なにより家賃が高い。
今日の夕食も節約して、ファストフードで済ますしかない。
毎週一度は通っている南記粉麺。香港ではメジャーなファストフード。
オクトパスを使って自動で注文できる機械がある。だけど使いにくい。
30HKDそこそこで一食食べれる安さだけど、味は悪くないから結構人気だ。
この日もたくさんの若者でにぎわってる。
出てくる麺はこんな感じ。スープも選べるし、色々具をトッピングすることもできる。
これで値段は50HKDくらい。
量も十分多いので、一杯食べたら、おなかいっぱいになる。
南記粉麵 – Openrice