福建 土楼への旅 6 とうちゃっく!!!


朝7時、土楼行きのバスに乗り込んで出発。
ついに目的地も目前だ。乗り合わせた乗客は、学生みたいな若い子たちが多かった。
きっと、龍岩の人たちにとって、土楼は遠足先みたいなもんなんだろう。
2時間揺られて、バスは終点につく。

名前が違うからよくわからないけど、ここがかの有名な洪坑土楼群景区なのでしょう。
門をくぐって、さっそく土楼を拝もうじゃない。
と勢いよく前進したら、入り口のところで暇そうな警備員のおっさんたちに止められる。
おっさん「ここを通るにはチケットが必要だ」
ひろくん「だろうね。じゃあチケット売ってよ」
おっさん「ここでは売っていない。800メートル来た道を戻れ。そうすればチケット売り場にたどり着くだろう」
ひろくん「すごいね!この不親切!感動!」
なんと、目的地の土楼密集地帯はテーマパーク?みたいになっていて、限られた通路からしかアクセスができない。
しかもそのチケットを買えるのは入り口だけらしい。
僕は重いバックパックを背負って道を歩いて引き返す。
ここに初めて来たすべての人、中国人も含めてがだいたい同じ運命を辿る。
僕らが下ろされたのは実はテーマパークの出口みたいなところ。ここは各種バスの発着場になっていて、
日帰りの人は帰りのチケットをここで買っておく必要がある。
だから、みんないったんはここで降りなきゃいけない。
それはいいっすよ。でもね。だったらここからも入園できるようにしてよ。
このお役所仕事感の半端なさ。それが逆にバカバカしすぎて楽しいレベルまで、エンターテイメントとして昇華されてますわ。

ここからのバスは、アモイ、龍岩、永定行きが結構頻繁に出ているみたいだ。

いちおう、このあたりの各地がバスでは結ばれているみたい。
でも正直何時間に一本くらいしか来ないバスなんて待ちたくない。ここでも活躍するのはバスなんかより、バイタクだ。
だけどのこの800メートルばっかりは何となく悔しくてバイタクに乗る気がしなかった。なので、歩いて戻ることにした。
さあ800メートル戻りました。いかにもな商業施設が立ってるけど、どこが入り口でどこでチケットを売ってるのか全然わからん。

くまなく探し回ること、約十分。景区入口と書かれた地下に通じる道を発見。
いやいやいや、ちょっと待ってよ。ここ、土地のあまりに余った田舎ですよ。
ここで、わざわざ地下道を作る意味、そして、ここまで入り口をわかりにくする意味。それが果たしてどこにあるのか。
まさか、土楼を見つけたときの感動を高めるために、敢えて、涙を呑んでこういうわかりにくい仕組みにしてくれているのか?
そうなのか?そうだとしたら、有難う!

大きな不安を抱えながら地下道を潜り抜け、そして上がった先には大きな門。
そしてその先には入り口らしきものと、赤い電光掲示板が見えた。
やっと、やっと、だどりつけそう。

この入り口。テーマパーク感。いいよ、いいっすよ、あんたの国だもんね。僕は何か言う資格はない。
でもね、でもね、こういうんじゃないんだよね。’旅人’が求めてるのは。
たぶん、旅人だけじゃなく、みんなが求めてるのは。
ここまで来たのよ。中国の辺境のここまで僕は土楼を見に来たの。
せめて、多少でいいから、秘境感みたいなものを出してくれないでしょうか?
もし何時間もバスに揺られてたどり着いた先にあるのがテーマパークだってんなら、
別に僕らはわざわざこんなところまで来なくていいわけなんです。
その辺のリトルワールド的な商業施設に行って、レプリカ見てればそのくらいの満足感は得られるわけですよ。
僕たちはリアルが見たいからここにきているんです。そこんとこよろしく。

入り口には各土楼景区の料金表が貼り付けてあった。
有名な土楼集落を訪れるには、金、金、金、お金を払わなければならない。
そのお金が、設備の維持保存に使われるとともに、住民の福利厚生となり、また政府の肥やしとなるわけだ。
しかし、我々日本人は、合掌造りの村を訪れるのにお金を払っただろうか。
土楼を見させてもらうのに、金を払うこの現実。
なんだろう、やっぱり僕には、これから行こうとしているところがテーマパークにしか思えない。

入り口のところにはツーリストインフォメーションがある。
あるといっても、机があって、そこに一人若い女の子が座っているだけ。
英語はしゃべれない。
ひろくん「土楼って泊まれるの?」
女の子「泊まれるわよ」
ひろくん「どの土楼に泊まれるの?振成楼とか有名なところに泊まりたいです」
女の子「ちょっと待って、友達のガイドがいるから」
友達女子ガイド「あなたは本当に土楼に泊まりたいの?」
ひろくん「はい」
正直、土楼に泊まれるのか、システムがどうなっているのか、全くわかっていなかった。
そもそもまだこの入り口を通った先がどうなっているのか確認もしていないので、検討がつかない。
テーマパークのアトラクションの中に泊まる感じだろうか?
それって、園内に入ったのに終園になっても「かくれんぼ」して出てこない悪ガキみたいな感じ?
でも、泊まって明日になっちゃったらどうなるんだろうか?またエントランス料とられるの?
僕のチケットは有効期限切れにならないの?
そもそも、土楼って何か所もあるみたいだけど、どれに泊まれるの?
ひろくん「僕、振成楼に泊まりたいんだけど、泊まれるの?振成楼だよ?この写真のところ」
友達女子ガイド「振成楼の近くに泊まれるところがあるわ。そこは一人150元くらいかかる。あなた本気で泊まるつもり?」
ひろくん「土楼に泊まりたいと思っているよ」
友達女子ガイド「なら宿のスタッフが迎えにくるわ。ちょっと待ってて。」
この時点で何となく嫌な気がしてる。僕の中国語は初級も初級、生まれたてのあかちゃんレベルだけど、
それでも、会話がかみ合っていないことくらいわかる。
質問の回答が直球じゃない時点で、僕の要望と違う方向にもってかれそうになっていることはわかる。
チケット売り場の外に連れてかれるとバイタクが待機していた。
そのバイタクに乗せられる。そして、ぼくが重いバックパックを背負ってせっせと歩いてきた800メートルを、
そのまんま引き換えし始めやがった。
そして、バスが到着したところにつき、僕が一番初めに警備員に追い返されたところを通過し、(今回はチケットを買ってたから!)
着いたところがこれ。
なんかカッコいい。でも、これじゃない感がある。これじゃない感がぷんぷんしてる。

僕は、ぼくは、ぼくは、土楼に泊まりに来たんです。それもメインのやつにできれば泊まりたいんです。
どうして、どうして、ここに連れてこられて、バイタクで連れてこられて、
しかもせっせと30分かけて歩いてきた道を引き返されて、若干徒労感でちゃってて、気持ちが沈んで、
それでも強引に部屋を見せられて、結果的に断りにくくなってるの?
部屋自体はいい感じですね。びっくりすることにシャワーもついてるし。
でもね、部屋のレベルとかどうでもいいわけです。。僕は一番の土楼を目指してここまで香港から36時間かけて来たんです。
こんなところで、ちょろまかされて、適当な土楼に泊まるわけにはいかないんです。
もう連れてこられたときに薄々わかったよ。あのガイドの子はここの親族かなんかなんだね。
たぶんこのテーマパークの従業員なんてみんなもともと中の土楼に住んでいた人たちなんだろう。
ツーリストデスクで質問すれば、そこは公式のデスクなんだから、
公明正大に回答してくれるはず、僕の利益を一番に考えて教えてくれるはず、
そう思った僕が、くそバカ野郎でした。
でも、どうして、言葉もうまく伝わらに僕みたいな幼気な子羊にこんな仕打ちをするんだろう。
僕は土楼の名前も、写真も見せてちゃんとあそこに泊まりたいと伝えた。
それを自分の利益のために、どうして回答を捻じ曲げることができるんだろう。
そのせいで、ほら、ここにまた不幸が生まれてしまった。
僕は、ここで、ああ、失敗したな、仕方ない、と宿泊先を変えちゃって、ああ、ほんとはあそこに泊まりたかったんだけどな、
とか後で後悔するようなお人良しじゃない。
ひろくん「僕は振成楼に泊まりたいのだ!」
バイタク兄ちゃん「とりあえず、見てよ、値段も下げるからさ」
ひろくん「僕は振成楼に泊まるんだ!」 正直泊まれるのかすらよくわかってないけど、
そしてバイタク兄ちゃんを無視して、初めての土楼を飛び出す。
バイタク兄ちゃんはしばらくついてきたけれど、そのうち僕とコミュニケーションをとることをあきらめた。
5分もしないうちに、そいつは目の前に現れた。

1912年から17年にかけた、ここの土楼群を代表する円楼。直径57.2m。高さ16m。四階建て。全228部屋。
振成楼。
目的地、到着!!


2件のコメント


  1. SECRET: 0
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    初めまして。来月、香港から福建土楼、桂林(陽朔)へと陸路で旅行を計画しており、検索でこちらのサイトにたどり着きました。
    バスの時刻表写真など、わかりやすくて大変参考になります。
    ちょうどリアルタイムで福建土楼を旅行されていらっしゃるようなので、更新を楽しみにしております!
    お気を付けて楽しんでいらしてくださいませ!

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  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    Konさん、お役に立てたようでよかったです!
    まさに僕が陸路で旅したところを旅行されようとしているんですね。
    個人的に陽朔はとても気に入りました。
    いい意味で、中国らしくない場所でした。
    もしかしたら情報をお伝えすることもできるかもしれないので、何かあればぜひ連絡ください。

    返信

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