福建 土楼への旅 8 洪坑土楼群景区

香港を出発して、三日目の昼。
僕は振成楼という土楼までたどり着き、そしてチェックインを完了した。
僕の今日の宿はこれです。

土楼に泊まるという目的。
それは早々に達成されることになった。
あとは帰らなきゃいけない日まで、ひたすら観光するだけの旅になります。
僕が宿泊することになった振成楼のあるここは、永定土楼民族文化村とも呼ばれている。
明とか清とかの時代に築かれた土楼が46も密集しているらしい。
ここを拠点とすると、周辺の少し離れた土楼も見学しやすいとのことだったので、
僕はここをとりあえずの目的地として目指してきた。
村のある一区画がごっそりテーマパークみたいになって、外界から隔絶され、
いくつか抜け道はあるんだろうけど、
基本的にはチケットを見せないと中に入れない形になっている。
ここに住んでいる人たちは、おそらくある日突然、動物園の檻に暮らす動物になった。
もっとも、人々が見に来るのは檻のほうで、動物にはあまり興味はないみたい。
でも、ぼくは思った。
動物園に暮らすのはどんな気持ちだろう。
きっと中国人はしたたかだから、ラッキーとばかり、みんな金儲けに精を出すだろう。
入場料で稼いだ金の一部はきっと還元されて、住民の懐もまんべんなく膨らむだろう。
こんな辺境のド田舎で、金持ちになるチャンスが生まれた。
それは奇跡と呼んでいいくらい、そこに住んでいる人たちにとって素晴らしい先祖からの贈り物ものかもしれない。
でも、きっと、快く思ってないじいちゃん、ばあちゃんもいるに決まってるんだよね。
得られる金がある一方で、失われてしまったものがある。
それは、穏やかに居眠りする昼のひと時のような、些細なことかもしれないし、
見境なく土足で入りこんでくる観光客に踏みにじられるプライバシーだったりする。
あっちは儲けてるのに、こっちは貧乏、ちょっとした観光ルートの違いでこじれてしまった人間関係かもしれない。
観光地になっても、昔ながらの生活を続けている人もいる。

飾りだけにしか見えない水車。

テーマパークの真ん中にある、慶雲楼。大きくて立派な方型の土楼。

だけど、中は朽ちていて、ほとんど住人が去っているようだった。
しっかり、人が住んで管理されている土楼がある一方で、ボロボロになって、見捨てられようとしている土楼もある。

ここが、テーマパークで寂しい気持ちもある。
でも、こうやってテーマパークになったおかげで、きれいに保存され続ける土楼があることもまた事実。
それでもね。僕は思うわけです。
朽ちるものは朽ちるべき。古くなったものは捨てられるべき。
無理に努力して保存しようとする必要はない。
それは本当に無理でしかなくて、結局長続きしないものだから。
それよりも人類は、前を向いて、新しいものを求めて生きたほうがいい。
過去を振り返っても、得られるものなんて無いから。
それでも、振り返ることをやめられないのは、僕ら生物は老いなければならないからかな。


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